筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2015年6月27日 土曜日、28日 日曜日の両日、東京 神田にて第15回 学術集会を開催しました。
今回の学術集会では、メインテーマを『MPSに対する罹患筋診断と治療~超音波、鍼、理学療法の融合~』として、過去2回の集会のテーマである動作分析による罹患筋診断、さらに発展させたものです。
最初のセションは当会役員・弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生から、当会の治療指針のレビューが行われました。
この中では急激に増加している当会の会員数状況を踏まえて、改めて筋膜性疼痛症候群(MPS)の基本的な考え方、当会の治療指針の目的・意図、Fascia自体の最新情報、解剖とエコーと動きを共通言語にした各職種の立ち位置、などについて説明がありました。
今回のエコー勉強会では『膝関節の超音波エコー実技と臨床的触診の重要性』と題して、株式会社ゼニタ代表取締役 銭田良博先生より、ご講演と実技指導をいただきました。
この中では、膝関節痛を例にとりその診断方法、治療方法の説明の後、実技が行われました。
(*)[銭田良博先生]
・株式会社ゼニタ代表取締役
・トライデントスポーツ医療看護専門学校理学療法学科
・理学療法士
・鍼灸師
今回の基調講演では『超音波エコーによる軟部組織の動態評価と運動療法』と題して、森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科 理学療法士 工藤慎太郎先生より、ご講演をいただきました。
この中では、超音波エコーと理学療法の関係、超音波エコーを使った運動機能評価、動態評価の方法、治療方法の説明などがあり、後半では実技が行われました。
(*)[工藤慎太郎先生]
・森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科
・森ノ宮医療大学大学院保健医療学部
・森ノ宮医療大学卒後教育センター
・鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科博士後期課程
・理学療法士
本学術集会における最初の会員プレゼンテーションは木村ペインクリニック 木村裕明 院長による「筋膜リリースからFasciaリリース」です。
このプレゼンテーションの中では、エコーを用いて筋膜だけでなく、靭帯、支帯、さらに神経上膜などのリリースを施行した症例を紹介し、従来の筋膜リリースから一歩先に進んだFasciaリリースの研究を行っている事の紹介がありました。
二日目最初のプレゼンテーションは向山デイサービス、東北大学大学院歯学研究科 理学療法士 山崎 瞬 先生による「慢性筋骨格疼痛に対する対策 療法士の強みを生かした戦略」です。
このプレゼンテーションでは、筋骨格系疼痛の改善や予防について療法士、柔道整復師、鍼灸師それぞれのスキルと地域のニーズ、新たな活躍場所、さらにはそれぞれの職種が持つスキルを繋ぐコンセプトの提案がありました。
続く会員プレゼンテーションは、増田医院 増田和人 院長による「当院でのトリガーポイント注射を用いた筋膜リリースについて~その方法と考察~」です。
このプレゼンテーションでは、増田先生が日常の診療で行われているエコーガイド下のトリガーポイントブロック注射、筋膜リリースの詳細が紹介され、その治療結果から各種考察をした結果が発表されました。
続く会員プレゼンテーションは、山下クリニック 山下 徳次郎 院長による「帯状疱疹急性期の痛みについての考察」です。
このプレゼンテーションでは、帯状疱疹の治療を通して、一般に炎症による侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛と考えられている痛みでもそれが真実であるとは限らず、筋膜性疼痛(侵害受容器の感作による疼痛)を含め、自分の目で確かめることの重要性について発表されました。
最後の発表は、塩釜鍼灸治療室 鳥居諭院長による『肩甲下筋へのアプローチ』です。
この発表の中では肩甲下筋というアプローチが困難な筋肉に対する治療方法の発表があり、実際に会員を被験者にして、鍼、道具を使いながら肩甲下筋へアプローチし治療を行う実技が行われました。
肩甲下筋のMPS会員被験者を対象に、小林医師・銭田理学療法士・鳥居鍼灸師により、今回のメインテーマである「エコー、鍼、理学療法の融合」を象徴した、解剖と動作評価とエコーを共通言語にした治療手技のデモンストレーション及び議論を行いました。
あるアプローチの有効性と限界をオープンに議論することで、治療方法の精度向上・安全性担保・技術の標準化を目指し、徒手・鍼・注射などの局所治療の得手・不得手を踏まえた多職種連携を構築するための切り口を提示しました。
今回の学術集会では、前回までの罹患筋診断というメインテーマから一歩踏み込み、超音波、鍼、理学療法などまで融合させた治療方法まで議論ができた有意義な内容となりました。
今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。
運営にご協力をいただいたソニックジャパン(株)様、東芝メディカルシステムズ(株)様、愛知電子工業(株)様、東洋レヂン様、コニカミノルタヘルスケア(株)様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。
筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は入会についてを参照願います。
なお、本学術集会の内容は、会員は会員コミュニティページより動画で視聴できます。