筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会は2018年3月31日をもって活動を終了しました。

引き続き、筋膜性疼痛症候群(MPS)及び疼痛治療に関する研究は、一般社団法人 日本整形内科学研究会(JNOS)にて実施しております。詳細はホームページを参照ください。

概要

筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせい とうつうしょうこうぐん、Myofascial Pain Syndrome:MPS)は、筋膜Myofasciaの異常が、原因となって痛みやしびれを引き起こす病気です。

Fasciaは現状の日本語訳では筋膜Myofasciaですが、現在は世界的にも筋膜に加えて腱、靱帯、脂肪、胸膜、心膜など内臓を包む膜など骨格筋と無関係な部位の結合組織を含む概念と理解されています。

トリガーポイントは筋硬結という形の表現ではなく、“敏感となった”点という「機能・状態」を指す用語です。多くのトリガーポイントが異常なfasciaに存在すると考えられつつあります

発症までの経緯・症状

fasciaに対する過負荷は通常、数日で自己回復しますが、自己回復できなかった場合に、異常なfasciaが発生して痛みが発生します。

異常なfasciaは、機械的に力を加えると、痛みを強く感じる傾向にあります。

その中でも、特に周辺を含めた広範囲に痛みを発生させる部位は、トリガーポイントとも呼ばれます。トリガーポイントは、侵害受容器など痛みのセンサーが高密度に分布しているFasciaに優位に存在していることが示唆されています。

異常なfasciaの定義

異常なfasciaの定義は、世界的に見ても定まっておりません。西洋医学における診断の定義(解剖anatomy、病態pathology、原因etiologyの三要素を説明できる疾患)で、あえて表現すれば、以下になると考えています。

  • 解剖anatomy:Fascia
  • 病態pathology:疼痛閾値の低下(過敏状態 Hypersensitivity)
  • 原因etiology:現時点では不明。Overuse, Disuseが契機になることが多い。

機能解剖的としては、組織の伸張性低下、組織間の滑走性低下が示唆されており、これらはエコーでも評価可能です。

一方、エコー画像上は、静止画としては「帯状の高輝度(白い)」に観察される傾向にあります。高輝度に見えるのは「画像処理上の反射特性」であり、異方性の場合は低輝度、また内部密度が均一の状態(一部の線維化)では低輝度に観察されることもあります。

局所病態として疼痛閾値低下の原因としては、「pHの低下」、「炎症や血流増減、異常血管」、「疼痛物質の局所濃度増加」などが示唆されているが、その病態は複合的であり解明が急がれています。

治療及び経過

この病気の治療においては、

  1. 適切な評価により発痛源(痛みの元:トリガーポイント、異常なfascia)を治療すること
  2. 悪化因子(アライメント、身体の使い方による「使いすぎOveruse・廃用Disuse・誤用Maluse」、心理的緊張、中枢過敏)を取り除くこと
  3. 早期の治療により痛みを取り除くこと

が重要です。

痛みの状態が急性痛から慢性痛に移行をすると、心身症の側面が現れ、ワインドアップ現象、中枢系感作、痛みの可塑性などの影響により脳が痛みに過敏になるなど、難治性の病気へ進行する可能性が高くなります。

発生源と悪化因子

具体的な治療方法は多様であり、直接法と間接法に分類しています。治療者毎の得手と、多職種連携で治療していくことが重要です。

直接法 direct approach

発痛源へ直接介入し病変部自体を治療(例:組織間の滑走性改善・組織自体の伸張性改善):Fasciaリリース(注射、鍼、徒手)、トリガーポイント注射、組織間リリース、時に鏡視下剥離術など。

間接法 indirect approach

発痛源を悪化させている因子(悪化因子)の同定・治療(例:病変部周囲組織の伸張性改善による病変部への負担を軽減、心因的緊張緩和によるリラックス):ストレッチ、筋緊張緩和(リラクゼーション:ポジショナルリリースなど)、動作指導、認知行動療法など

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