筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2013年6月8日 土曜日、9日 日曜日の両日、東京 錦糸町にて第11回 学術集会を開催しました。
続くセクションは実技勉強会です。実技勉強会の前半は慈恵医大ペインクリニック、自衛隊中央病院 整形外科 横部旬哉 先生によるMPSと関節機能障害に関する説明の後、トリガーポイント研究所 佐藤恒士所長による実技勉強会がありました。
このプレゼンテーションの中では痛みを発している人の中には筋筋膜性疼痛症候群(MPS)だけでなく、関節の動きが各種要因で阻害されて痛みが発生する関節機能障害も併発しているケースがあると思われる事などが発表されました。
後半はトリガーポイント研究所 佐藤 恒士 所長により実際に関節の動きを回復させることで、筋の緊張を弛める実技勉強会がありました。実際に会員が被験者になり、佐藤所長が悪い部を特定して、施術を行いました。
施術前と後における実際の変化に被験者も驚いておりました。
実技勉強会の後半はげんき本舗治療院 羽山 弘一 先生によるオステオバシーの基本概念の説明と実技です。
オステオパシーは1874年にアメリカミズーリ州最初に発表され、以降各国に広がった一つの医療における哲学、体系です。
オステオパシーでは骨や関節だけではなく筋、筋膜、神経、内臓など様々な器官や組織を対象としています。
このプレゼンテーションの中では、オステオパシーの様々な(カウンターストレイン、スティルテクニック、筋筋膜リリースなど)を使い、トリガーポイントに対処をする方法の説明がありました。
また、このプレゼンテーションの後には、実際に会員を被験者にして実技勉強会がありました。被験者も実際の効果を体験することが出来ました。
一日目最初の会員プレゼンテーションは関西労災病院整形外科 黒田有佑 先生によるプレゼンテーション『腰椎椎間板ヘルニアにおける下肢筋圧痛の局在分析 -障害神経根による傾向に注目して- 』です。
このプレゼンテーションの中では、神経に異常がある場合に、障害神経根レベルが違うとトリガーポイントのでき方にも違いがでることを示唆するデータについての発表がありました。
続くプレゼンテーションは、みね鍼灸院 院長 峰真人先生による『鍼灸治療中の会話を通じての心理社会的アプローチ』です。
慢性疼痛の患者さんは、長い痛みで治療に対しても色々な不安を持っている事が多く、より効果的な鍼治療をするためには心理社会的アプローチが必要とされる事と、その手段としてトリガーポイント鍼療法で現れる認知覚を使った会話が非常に有効である事の説明がありました。
続くプレゼンテーションは加茂整形外科医院 院長、当会名誉会長 加茂淳 先生による『筋骨格系の痛みのほとんどは筋痛である』です。
このプレゼンテーションの中では改めて、筋骨格系の痛みのほとんどは筋痛であること、そのメカニズムの説明がありました。
尚、このプレゼンテーションは第47回 ペインクリニック学会でも発表される予定です。
今回の特別講演は『複雑系としての痛み:心理・社会的アプローチをどうとらえるか』と題して、慈恵医大ペインクリニック 診療部長 北原雅樹 先生 より、ご講演をいただきました。
この講演では、痛みの治療には心理・社会的アプローチが必要になる理論的背景、症例からみた心理社会的アプローチの例、心理・社会的アプローチをどう取り入れていくか、などを講演していただきました。
慢性痛の原因は身体的要素、社会的要素、心理的要素の三つが複雑に関係にしており、それぞれ要素において対応が必要な事や、実際に社会的要素、心理的要素の治療方法や症例を含めて講演していただきました。
社会的要素、心理的要素に関する内容は、当会の会員にとって非常に有用な講演であり、多くの質疑応答が交わされました。
二日目の初回のプレゼンテーションは増田医院 院長 増田 和人先生によるアナトミートレインとトリガーポイントについての一考察をした結果の発表です。
アナトミートレインとは体中に張り巡らされた筋・筋膜の網を通して、姿勢や動作の安定がどのように得られていくのかを解明する理論です。
今回はアナトミートレインとトリガーポイントの関連について仮説を立てて、治療を行った経過、結果などが発表されました。
二日目の第二部はシンポジムを行いました。
今回のシンポジムは『線維筋痛症にトリガーポイント治療は有効か?(広範囲の痛みに対するアプローチ)』をテーマに行われました。
最初にシンポジムを始めるにあたり、総合司会の じんだいじクリニック 院長 菅野弘之 先生からシンポジムの主旨の説明がありました。特に今回は筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の中の線維筋痛症(FM)という立場で、MPSの治療指針の有効性を発信する事を目的とする事が説明されました。
シンポジム最初の発表は、よしむら鍼灸治療院 院長 吉村亮次 先生による『線維筋痛症にTP治療は有効か ~広範囲の痛みに対するTP鍼治療~』です。
吉村先生は、臨床トリガーポイント研究会(MTP療法)を実践されており、実際に線維筋痛症と診断された患者さんへ、この治療法を適用した結果、効果があった事などが発表されました。
続く発表は、顎関節症クリニックやまだ歯科 院長 山田貴志 先生による『線維筋痛症の局所療法 ~線維筋痛症に対する外側翼突筋除痛療法の効果~』です。
この発表の中では、局所療法で中枢感作はコントロールできるか?という点に着目をして、線維筋痛症と顎関節症の深い関連性や実際に局所治療が線維筋痛症を改善させた事例などを発表されました。
続く発表は青森県六ケ所村国民健康保険尾駮診療所/金沢大学機能解剖学分野 小林只 先生による『広範囲の痛みに対する私の治療方法と治療成績~局所-中枢-生活~』です。
この発表の中では、実際の臨床治療の場で小林先生が普段から実践されている多面的な治療方法を症例ベースで発表されました。
具体的には(1)局所療法(筋膜間注入法、トリガーポイント注射・鍼、掃骨鍼療法)、(2)運動療法、(3)認知行動療法、(4)生活・社会面 のどの要素が強いかを判断しながら、「スタッフも十分にいなくても、資源が少なくても実施できる現実的な方法・実践」を紹介し、線維筋痛症を含む疼痛治療に効果を上げている事が発表されました。
また、線維筋痛症と誤診されている内科疾患の概説、局所療法が効果的な慢性痛患者のタイプに関する考察も発表されました。
続く発表は、目白大学 保健医療学部 助教 那須輝顕 先生による『線維筋痛症モデルを用いたトリガーポイント注射による鎮痛機構を求めて―ノイロトロピンを用いた検討―』です。
この中では、線維筋痛症の線維筋痛症のモデル動物と考えられている繰り返し寒冷ストレス(RCS)モデルを用いて慢性痛の治療によく使われるノイロトロピン(NTP)の筋への微量投与による鎮痛効果について検討した結果について発表がありました。
最後の発表は、東京医科大学八王子医療センター リウマチ性疾患治療センター 教授 岡寛 先生による『線維筋痛症におけるトリガーポイント注射の応用』です。
この中では、線維筋痛症を取り巻く状況、治療方法など最新の情報が紹介され、岡先生が日ごろから実践されて効果が出ている治療方法、治療結果、診療ガイドライン2013の紹介がされました。
今回の学術集会では、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の研究、治療に関する事はもちろんの事、線維筋痛症まで幅を広げて、さまざまな議論、情報交換を行う事ができました。
今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。
ご多忙の中ご講演をいただきました 慈恵医大ペインクリニック 診療部長 北原雅樹 先生、目白大学 保健医療学部 助教 那須輝顕 先生、東京医科大学八王子医療センター リウマチ性疾患治療センター 教授 岡寛 先生、運営にご協力をいただいたビタカイン製薬様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は入会についてを参照願います。
なお、本学術集会の内容は、会員は会員コミュニティページより動画で視聴できます。